1000歳の自分が願ったこと
Gatorgoon
結婚後、子供も出来て、息子と娘が生まれた。
幸せになった気がした。
でも、それもつかの間だった。
必ず出会いがあれば別れもある。
結婚して50年もすると、自分より先に奥さんが亡くなってしまった。
あまりにも自分が若いことから最期はまるで母親と息子のような関係で、
奥さんを介護しているような気分だった。
さらに息子や娘、孫、曾孫、玄孫まで面倒を見ることに。
孫たちも結婚しなくなり、家系が途絶え、家族や親戚がいなくなる。
寂しい気持ちを紛らわせるために再婚相手を探して、
結婚して、新しい家族を作る。
その繰りかえしだった。
何度も結婚式を開いて、何度も葬式を行った。
10回ぐらいもすると感動することも、涙を流すこともなかった。
そして、子供が生まれるたびに子育てを経験した。
最初の頃は苦労したが、3〜4回経験すると、
すべて何が起こるのかわかっていたので慣れたものだった。
初めて結婚した時の子供が一番印象に残っている。
苦労したことが一番の思い出になる。
いつしか「一人で過ごすのが楽だ」と思うようになり、
私はいっさい家族を作らないことにした。
もう1000歳だった。
私はお金も稼いだし、有名にもなった。
家族ができたこともあった。
でも、今は生きていることが辛い。
やりたいことをやり尽くしてきたはずなのに。
1つも後悔することなんてないのに。
何のために生きているのかわからなくなった。
ただ生きているだけだった。
普通の人より10倍以上生きて気づいたことがある。
時間さえあれば、やりたいことができれば、
人生は楽しくなると思っていた。
でも、そうではなかった。
人生は限られた時間を生きるからこそ楽しくなる。
ときには思うようにいかないことだってある。
でも、その苦しみがあるからこそ、
乗り越えたときにそれ以上の喜びがある。
一度しかチャンスがないからこそ、本気になれることだってある。
命という限られた時間をどう使うのかが人生の醍醐味なのだろう。
もう私は限界だった。
これ以上生きることは耐えられなかった。
神様に最後のお願い事をすることにした。
「神様、お願いを聞いてくれますか」
すると、すぐに神様は現われた。
「どうした?」
「お願い事が2つあったと思うのですが、聞いてもらえますか?」
「そうだったな。まだ2つ叶えていなかったな。もう必要ないと思っていたが」
「そんなことはありません」
「それで何だ?」
「じゃあ、1つ目は不老不死になる前の自分に、19歳の自分に戻らせてください。できますか?」
「そんなこと簡単だ。あともう1つは何だ?」
「最後の1つですが、私のこれまでの記憶を消してください」
「本当にいいのか?色々と楽しんでいたみたいだが」
「いいんです。知らないほうがよいことだってあります」
神様は目を閉じて念じると、気を失った。
目を開けると、私は自分の部屋の机にうつ伏せて寝ていた。
とても長い夢を見ていたような気がした。
いつものように受験勉強を始めることにした。
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